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コラム

「茉莉花-ピアノver.-」制作裏話

▶動画はこちら

2024年2月13日

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中国の民謡「茉莉花」をピアノソロでアレンジしました。制作裏話をお話しします。
また、2ページ目の⑷~⑹では演奏のポイントをお話ししています。
電子楽譜をご利用のかたのみならず、動画をご覧いただく際のポイントとしてもお読みいただけます。


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⑷にじみ出る自分らしさ

⑴で触れたとおり「どうした?」という平和なアレンジですが、自分がアレンジしている以上はそこはかとなく変なところがあるものです。

自覚しているところで言えば、最後の小節の最後の音。
今までのアレンジでも出現率が高いuna corda(弱音ペダルを踏む)が、この曲でこの音だけ登場します。
電子楽譜を販売しているので全部はお出しできませんが、最低限で提示します。

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そもそも、これまでに動画を上げたオリジナルピアノアレンジでppp(ピアニッシッシモ)を指示したことがあったかと思い返していますがすぐ思いつきません。
オリジナルピアノアレンジに限らなければ、原曲準拠のアレンジの場合は原曲楽譜に従うのでpppを使ったことはありますし、自作曲ならppppも使いました(➡「中國神義樂奏」の第二曲など)。
…まぁ、学生時代は爆音が代名詞だったくらい繊細な音楽とは縁遠い自分なので、mf(メゾフォルテ)以上がほとんどであることは事実です。

また、右手の親指側で弾いている内声のフレーズを左手が引き継ぐという「ひとつの旋律を左右で分担する」手法を自分はよくよく使いますが、今作も使っています。
たとえば下の画像の部分。上が右手で下が左手、赤枠のところで移行します。

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曲調のせいか、弾いているときは終始太極拳の如く両腕が常に気をかき混ぜているような動きになります。
(一時期太極拳にはまって毎日やってましたが、懐かしい気分でした)


⑸配信楽譜について〈音楽用語解説〉

今作は楽譜も配信しています。(楽譜はこちらです
難易度は中級くらいで、当サイトで採用している10段階難易度では「レベル4」です。
いつも以上に無難な楽譜で、出てくる音楽用語も一般的なものばかりです。
以下、簡単に解説します。

音楽用語
意味
Andantino
Andante(歩く速さ)より少し速く
con amore
愛情をもって
tranquillo
静かに
poco
少し
rit.
だんだん遅く
a tempo
元のテンポで
legato
なめらかに
grandioso
壮大に
ma non troppo
しかし甚だしくなく
sonore
音を響かせて
sostenuto
音を保って
senza ~
~せずに、~しないで
decresc.
デクレッシェンド(だんだん弱く)
perdendosi
消えゆくように(だんだん遅くしながらだんだん弱く)

…ホントに、なんということでしょう。
amoreとかtranquilloとか、自分とは真逆な言葉ばかりです。

以前恋愛の曲をピアノアレンジ(こちら)したときにも思いましたけど、愛と縁がない自分がcon amoreと言っても説得力皆無なんですよね…。
「演」奏ですから素の自分は関係ないのですが、素の自分を知る人からしてみたら爆笑されるか、「こんなのもできるのね」とまた言われてしまいそうです。


⑹演奏のポイント〈音楽解説〉

今回の電子楽譜に解説をつけていないので、こちらで少しポイントを説明します。

まず、テンポは自由に揺らしてください。
楽譜は二分の2拍子ですので、冒頭のテンポ表示は二分音符での数値です。

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動画は「二分音符=40くらい」で始まりますが、一定ではありません。
楽譜内ではrit.と3か所だけ表記していますが、参考動画でもそれ以外の場所でテンポを揺らしています。
逆にガチガチメトロノーム演奏は避け、穏やかな風に微かに揺れる茉莉花を想像しながら弾いてください。

音の強弱や表現も自由で構いません。
敢えて指示するとすれば、

…くらいですが、これらは自然にそうなると思います。
「空間を広く」というのは、音を強く弾くという意味ではありません。
頭で考えても答えは出てきませんので、太極拳の動きを思い浮かべてゆっくりと大きく空間をかき混ぜてみてください。

13小節目以降の左手は、下向き音符を右ペダルで伸ばしながら、上向き音符を弾きます。
下向き音符の響きが濁らない気をつけながら、上向き音符の弾き方を研究してください。
特に13~14小節目は左右の手で輪唱しますので、間違えないようにしましょう。

前半の左手は黒玉音符だけですが、ペダルで和音を構成するようになっています。
キーワードのような毎小節頭のフレーズは強調しすぎないようにさりげなく弾いてください。
左手が終始跳躍しますので、右手のメロディーが埋もれないようにしましょう。
大きく跳躍するところは焦らずに時間をたっぷりとってください。

上の⑸で紹介したsonoreの後半(27小節目~)で出てきます。
ここは煌びやかにギャンギャン鳴らすのではなくて、存在を奥ゆかしく響かせてください。
今までのピアノアレンジで秘技として紹介していたドビュッシーの「沈める寺」の冒頭を想像して、広がる靄の中にどこからか響いてくる音を目指してください。
この部分の右手はオクターヴ奏が続きますが、難しいときはオクターヴの低い側の音を省略してください。

右ペダルは終始使用しますが、まず響きが濁らないように注意を払ってください。
響きを聞かずに弾くとメリハリがない音になってしまいます(=メリハリがない棒読み演奏に気づかない)ので、演奏しながら響きに耳を傾けましょう。
右ペダルを切るマーク(*的なマーク)は3か所記譜していますが、すべてrit.の終わり際です。
切り口が雑にならないように響きをよく聞いて、ペダルの切り方を工夫してください。
そして最後、前述のuna cordaでは左ぺダルを優しく踏みましょう。
静かなシーンですので、機械的な音が鳴らないように注意してください。

ここまで真面目に語りましたが、基本的に「こう弾かねばならぬ」はありません。
一番大切なのは、

自然に身を任せて自由に描く

…のが理想ですが、自然に弾こうと「意識する」とかえって不自然になります。
ある意味何も考えなくても弾けるようになるまで全身に音をしみ込ませて、体と心を完全に脱力させてください。
ジャスミン茶にはリラックス効果があるそうですが、この曲を弾くときもリラックスしてから弾きましょう。
(ジャスミン茶って好き嫌いがハッキリしているそうですが…自分は温かいほうがいいです)


おわりに

「穏やかな風に微かに揺れる茉莉花」
「奥ゆかしく」

自分で思いついた文字列とはいえ、この顔でその言葉だなんて気持ち悪くて笑えます…
自分は感覚優位なタイプだからか、弾いたり作ったりしている最中はある意味空っぽなので何とも思わないんですが、ふと冷静になると全身痒くなることがあります。
ただ今回は⑴でお話ししたとおりアウェーではありませんから軽症で済んでいます。
中国民謡のピアノアレンジは他にもやりたい曲があるので、追々。

…最後に一応。
今作のアレンジャーは、土下座レベルの「プロ武ナー努(こちら)」をやらかした人と同一人物です。